介護の求人票、AIに下書きしてもらう手順|人が確認する項目まで
求人票の更新期限が近づくと、去年の原稿を開いて日付だけを差し替える。
そういう年が続いていませんか。
この記事では、求人票と採用ページの下書きをAIに任せる手順をお伝えします。あわせて、下書きが出たあとに人が確認する項目も整理しました。
どこまでをAIに渡し、どこからを自分でやるのか。この線が引けていれば、迷わずに進められます。
更新期限の夜、日付だけ変えて出す
去年の原稿を使い回すのは、手を抜いているからではありません。文章を考える時間が、その日にもう残っていないからです。
「これでまた3か月」と思いながら、送信ボタンを押す
全員が帰ったあとの事務所で、更新画面を開く。前回の内容をコピーして、日付だけを直す。
送信を押す前に、一瞬よぎります。
「これでまた3か月、誰も来ないんだろうな」
それでも押します。他にやりようがないからです。
職員から「人、入らないんですかね」と聞かれて、「今探してるところ」としか返せない。その言葉が頭の隅に残ったまま、次の3か月が過ぎていきます。
「掲載内容が弱い」と言われても、どこが弱いのか分からない
求人媒体の担当者から「掲載内容が弱いですね」と言われた。
そんな経験があるかもしれません。
「検討します」と答えたものの、何をどう検討すればいいのか分からないまま日が過ぎた。よくある話だと思います。
ここで問題なのは、文章力ではありません。白紙から書き始めていることです。
ゼロから文章を起こすには、まとまった時間と集中力が要ります。それが取れない日に人が取る行動は、手元にある材料の流用です。前年の原稿、媒体のテンプレート、どこかで見た言い回し。こうして、どの事業所も似た求人票になります。
変えられるのは伝わり方で、労働条件そのものではありません
先に、はっきりさせておきたいことがあります。
給与や休日は、多くの場合、管理者の一存では動かせません。法人の規程で決まっているからです。書き直しても、そこは変わりません。
書き方で変えられるのは、伝わり方だけです。
これは裏を返せば、条件を実態より良く見せる話ではない、ということでもあります。「未経験歓迎」と書いて実際は経験者しか採らない、手当を大きく見せて実際の支給と違う。そうした書き方は、この記事が勧めるものではありません。記事の後半で、実態と食い違っていないかを確認する手順をお伝えします。
そのうえで申し上げると、伝わり方には、まだ手が残っています。条件が同じでも、書かれていることが違えば、読み手の受け取り方は変わってきます。
なお、求人票や採用ページの原稿づくりは、利用者の情報も職員個人の情報も使わずに進められる仕事です。介護事業所のAI活用、始める前に決める3つのことで整理した3つの段階のうち、個人情報を含まない段階1にあたります。事業所としてのAI利用ルールをまだ決めていない場合は、先にそちらをご覧ください。
どこをAIに任せ、どこを自分がやるか
AIに渡すのは作業で、判断は渡しません。
この分け方を先に決めておくと、あとで手戻りが起きません。
任せるのは「白紙を埋める作業」だけ
AIに頼めるのは、次の4つです。
・たたき台をつくる:箇条書きのメモを渡して、求人票の形に整えてもらう
・表現を言い換える:内輪でしか通じない言葉を、応募者に伝わる言葉に置き換える
・読みやすさを整える:長い一文を分ける、順番を入れ替える、重複を削る
・媒体別に書き分ける:同じ内容を、自社サイト用・ハローワーク用・求人媒体用に調整する
いずれも「材料はこちらにあり、形にする手間だけを渡す」という作業です。何を書くかを決めているのは、材料を用意した側になります。
自分がやるのは、この3つ
一方で、次の3つは人に残ります。
労働条件の事実確認。給与額、賞与の有無、休日数、社会保険の加入条件。これらが自事業所の実態と合っているかは、就業規則や雇用契約の内容を知っている人にしか確認できません。
法令上の表示ルールへの適合。求人には、明示が求められる事項や、表示のうえで守るべきルールがあります。ここは一次情報にあたって確認する部分です。
自社の実態と合っているかの判断。AIは、渡された材料から「それらしい文章」をつくります。材料になかったことを、もっともらしく補ってしまうこともあります。書かれた職場が本当に自分の事業所かどうかは、現場を知る人にしか判断できません。
手を抜いたことにはなりません
材料を選び、条件を確認し、表示のルールに照らし、実態と合っているかを判断する。ここまでは全部、人がやっています。
AIが引き受けたのは、白紙を文章の形にするところだけです。
「AIが法令チェックまでしてくれる」わけではありません
AIに「法令に違反していないか確認して」と頼めば、それらしい回答は返ってきます。ただし、その回答が最新の制度に基づいている保証はありません。制度は改正されますし、AIが参照している情報が古いこともあります。
自事業所の雇用契約や就業規則の中身を知らないまま答えている、という点も見落とせません。
AIの回答は、確認すべき箇所に気づくきっかけとしては役立ちます。しかし最終的な確認は、一次情報にあたって人が行うものです。確認先は、この記事の後半にまとめました。
まず、材料を書き出す
AIに渡す材料さえあれば、この作業の半分は終わっています。
材料がないまま頼んでも、どこかで見たような文章が返ってくるだけです。
「他の事業所と何が違いますか」に詰まったことはありませんか
面接で応募者に聞かれて、うまく答えられなかった。そんな経験があるかもしれません。
毎日そこにいると、何が特徴なのか分からなくなります。他と比べる機会がないからです。
事業所に特徴がないわけではありません。言葉になっていないだけです。
材料を書き出す作業は、そのまま「自分の事業所を言葉にする」作業です。ここで出てきた言葉が、下書きの元になります。
書き出すのは、条件と職場の様子の2つだけ
用意するのは次の2種類、15分ほどで書けます。
条件:サービス種別、募集職種、雇用形態、勤務時間、給与、休日、仕事内容。求人票の入力画面や、前回の原稿から拾えます。
職場の様子:2〜3行で構いません。「送迎の待ち時間に職員同士が申し送りをしている」「入職2年目の職員が入浴の担当を任されている」。
こうした、実際にある場面を書きます。
ここで、うまく書こうとしないでください。整っている必要はありません。整えるのはAIの担当です。箇条書きでも、話し言葉のままでも構いません。
なお、求人票に何を書くべきか(必須の記載項目や、応募につながる書き方)については、デイサービスの求人票の書き方完全ガイドで解説しています。書く内容そのものを見直したい場合は、そちらをご覧ください。この記事で扱うのは、手元の材料をAIに渡して形にするまでの手順です。
渡してはいけない材料があります
「個人情報を含まない仕事」と書きましたが、これは渡す材料を選べばという条件つきです。手元の資料をそのまま貼り付けると、意図せず個人情報が混ざります。
次のようなものは、AIに渡す前に取り除いてください。
・退職した職員や在籍職員の氏名が入ったシフト表、職員名簿
・実在の職員インタビューの録音や文字起こし(掲載の同意を得ていても、原稿づくりの材料としてAIに渡すかは別の判断です)
・利用者の状態や事例が書かれた記録、ヒヤリハット報告
・過去の応募者の履歴書、面接メモ
渡すのは、次の2つに限ります。
ひとつは募集条件。サービス種別、職種、雇用形態、勤務時間、給与、休日、仕事内容です。もうひとつは職場の様子を、人が特定できない形にしたものです。
公表しているかどうかは、判断の基準になりません。事業所のパンフレットに載せている内容でも、職員個人が分かる部分は外してください。
気をつけたいのは、職場の様子のほうです。氏名を書いていなくても、書き方によっては誰のことか分かってしまいます。
先ほど例に挙げた「入職2年目の職員が入浴の担当を任されている」も、職員12名の事業所なら特定できるかもしれません。こう直します。
・直す前:入職2年目の職員が入浴の担当を任されている
・直したあと:経験の浅い職員も入浴介助に入る体制
人を消して、事実だけを残す。求人票に必要なのは後者です。
お手元のメモも、同じ要領で見直してみてください。
なお、個人情報を含む情報をAIで扱う場合は、この記事の範囲を超えます。入力してよい情報の線引きと、そのために整える条件は、介護事業所のAI活用、始める前に決める3つのことで解説しています。
コピーして使えるプロンプト例
頼み方の型さえ決まっていれば、毎回考え直す必要はありません。
ここでは3つの型をお示しします。
そのまま貼り付けるのではなく、〔 〕の部分を自事業所の内容に置き換えてから使ってください。募集条件や掲載先の仕様は事業所ごとに違うため、この置き換えが出発点になります。
① 書き出した材料を、求人票の形にする
先ほど用意した材料を、そのまま渡します。
あなたは介護事業所の採用担当者です。以下の情報をもとに、求人票の下書きを作成してください。
・サービス種別:〔通所介護/訪問介護 など〕
・募集職種:〔介護職員/サービス提供責任者 など〕
・雇用形態:〔正社員/パート など〕
・勤務時間:〔9:00〜18:00、シフト制 など〕
・給与:〔月給○○円〜○○円 など〕
・休日:〔週休2日、年間休日○○日 など〕
・仕事内容:〔箇条書きで3〜5個〕
・職場の様子:〔書き出したメモをそのまま〕
条件:
・専門用語や社内でしか通じない言葉は使わない
・誇張した表現は使わない
・情報が足りない項目は、勝手に補わず「要確認」と書く
最後の一行が要点です。足りない情報を勝手に埋めさせないことで、あとで事実確認すべき箇所が目に見える形で残ります。
② 応募者の目線で書き直す
たたき台ができたら、読み手の目線に寄せます。
次の求人票の下書きを、介護の仕事を検討している応募者の目線で書き直してください。
・専門用語や略語には、簡単な説明を添える
・「アットホーム」「風通しが良い」のような、どの事業所にも当てはまる表現は使わない
・1日の流れが想像できる書き方にする
・事実として書かれていないことは足さない
〔たたき台を貼り付け〕
「どの事業所にも当てはまる表現を使わない」と指定すると、抽象的な言葉が落ちます。
そのぶん、具体的に書ける箇所と、書けない箇所がはっきりしてきます。書けない部分があれば、材料が足りていないというサインです。ひとつ前の節に戻って、その部分だけ書き足してください。
③ 同じ内容を媒体別に書き分ける
原稿が固まったら、出し先ごとに調整します。
次の求人原稿をもとに、掲載先ごとの原稿を作成してください。内容は変えず、書き方だけを調整してください。
・自社の採用ページ用:職場の様子が伝わるように、文章でまとめる
・ハローワーク用:項目ごとに簡潔に。事実を淡々と書く
・求人媒体用:冒頭で仕事内容と条件が分かるように
〔原稿を貼り付け〕
媒体ごとの文字数制限や入力欄の仕様は、実際の掲載画面で確認してください。媒体それぞれの特徴と使い分けについては、介護施設の求人媒体別最適化ガイドで解説しています。
下書きが出たら、人がここを確認する
ここからが、人にしかできない仕事です。
下書きは下書きであって、そのまま出せる原稿ではありません。次の4点を順に確認してください。制度の詳細まで踏み込むと長くなるため、ここでは「どこを見るか」と「どこで確認できるか」に絞ります。
① 明示が求められる事項が入っているか
労働者を募集する際や労働契約を結ぶ際には、明示すべき事項が定められています。2024年(令和6年)4月から、就業場所・業務の「変更の範囲」が明示事項に加わりました。
プロンプトで「要確認」と書かせるよう指示しても、そのとおりになるとは限りません。材料にない項目がそのまま抜け落ちることもあれば、一般的な内容が補われることもあります。
手元のメモに含めていない明示事項がないかを、次の一次情報で確認してください。
・厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
・厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」
② 性別・年齢の書き方が表示のルールに反していないか
募集・採用にあたっては、性別にかかわりなく均等な機会を与えることが求められます。年齢についても、原則として年齢制限を設けることはできないとされており、例外にあたる場合の取り扱いが定められています。
AIは、渡した材料に「若い方が活躍中」といった表現が含まれていれば、そのまま原稿に反映してしまいます。次の資料で、表現が適切かを確認してください。
・厚生労働省「採用・選考時のルール」
・厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」
③ 賃金の書き方が実態と合っているか
賃金は、応募者がもっとも注意して読む項目のひとつです。ここが実態と食い違うと、入職後の行き違いにつながります。
地域別最低賃金は毎年改定されるため、前年の原稿をそのまま使うと下回ってしまう場合があります。金額は改定のたびに変わりますので、都道府県ごとの最新額は次のページでご確認ください。
・厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
あわせて、手当や固定残業代の書き方が実際の支給内容と一致しているかも確認してください。
④ 現場の実態と食い違っていないか
最後に、書かれている職場が本当に自分の事業所かを読み返します。冒頭で、変えられるのは伝わり方だけだと書きました。ここがその確認にあたります。
AIは、渡した材料が少ないと、一般的な介護事業所の姿を補って文章にすることがあります。研修制度、職員構成、1日の流れ。読みやすくなった文章が実態から離れていないかを見てください。
求人に関する情報は、正確かつ最新の内容に保つ措置を講じることが求められます。
虚偽の表示や、誤解を生じさせる表示をしないことも、職業安定法で定められています。
・厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」
整った文章ほど、事実と違っていても気づきにくくなります。文章の完成度と、内容の正確さは別のものだと考えてください。
採用ページに広げるときは、求人票と役割を分ける
求人票と採用ページは、読まれる場面が違います。同じ原稿を貼り回すと、どちらも中途半端になります。
求人票は、条件を確認する場所です。勤務時間、給与、休日、仕事内容。応募を判断する材料が迷わず読み取れることが大切です。
採用ページは、働く姿を想像する場所です。1日の流れ、職員の年齢層、入職後にどう覚えていくのか。求人票に書ききれない部分を補います。
AIへの頼み方も変わります。求人票は「事実を淡々と、漏れなく」、採用ページは「場面が思い浮かぶように」。同じ材料でも、この指定ひとつで文章が変わります。
採用ページに何を載せるかは、介護施設の採用サイトに載せるべき情報12選で整理しています。サイト全体の設計から見直す場合は、介護・医療の採用が動くサイトの作り方もあわせてご覧ください。
今日からできること
3日に分けると、1日あたりの負担が小さくなります。
・1日目:条件と職場の様子を書き出す(15分)
・2日目:プロンプト①でたたき台をつくり、②で書き直す
・3日目:4つの確認項目を上から順に見る。「要確認」と出た箇所を埋める
3日目がいちばん時間のかかる作業です。ただ、ここを飛ばすと、下書きのまま外に出ることになります。
確認を済ませたうえで、次回以降も①〜③のプロンプトは再利用できます。ただし、掲載の都度、募集条件、法令上の明示事項、最低賃金、掲載先の入力欄や仕様が最新かを確認し、材料を更新してください。
よくある質問(FAQ)
Q. AIが作った求人票を、そのまま掲載してもよいのでしょうか?
Q. 求人票づくりに、職員の名前や利用者の情報を入力しても大丈夫ですか?
Q. AIに「法令に違反していないか確認して」と頼めば十分ですか?
Q. 同じ原稿を、自社サイトとハローワークと求人媒体に使い回してよいですか?
まとめ──書けなかったのは、白紙から始めていたから
給与や休日を動かせなくても、伝わり方には手が残っています。
書けなかったのは文章力の問題ではなく、白紙から書き始めていたからです。材料を書き出してAIに渡せば、その部分は肩代わりできます。
そのぶんの時間は、確認に回してください。明示が求められる事項、性別・年齢の書き方、賃金、そして実態との一致。判断はすべて手元に残ります。
次の更新期限の夜は、日付を変えるだけの作業にしなくて済むはずです。
採用のご相談
求人票は、単体で読んでも良し悪しが分かりにくいものです。
RadiantCoCoでは、同じ地域・同じ職種の他事業所がどんな条件をどう書いているかを調べたうえで、媒体ごとの求人票の見直しをご提案しています。採用サイト・採用ページの設計もあわせて承っています。
まずはお気軽にご相談ください。